ロードバイクで早く走るためには、正しいフォームで走ることが重要です。正しいフォームをみにつけることで、ペダルに力が伝わるとともに怪我の防止にもつながります。
今回は、元学生チャンピオンの合田祐美子さんが、ロードバイクの基本フォームについて解説していきます。
ロードバイクの良いフォームをみにつける目的
ロードバイクに乗るうえで基本となるのが、良いフォームを身に付けることです。良いフォームを身に付ける目的は、主に以下の2つになります。
- 無駄なエネルギー消費や必要以上の疲労を減らすこと
- 身体の機能(筋肉、骨格など)を最大限に使えるようにすること
ここで私が「正しい」フォームではなく「良い」フォームという表現をするのは、ひとりひとり身体のバランスや骨格などが異なるため、これが絶対に正しい!とは言い切れないからです。
ただそうは言っても、基本となる良いフォームを身につける目的やこの目的を達成するために必要な知識やトレーニングは、全員に共通していることです。そのため、まずはきちんと基本を理解し、それから徐々に自分に最適なフォームを作り出していってもらうとよいでしょう。
基本乗車姿勢フォームを写真付きで解説
基本フォームは【1】乗車姿勢と【2】基本のペダリング技術に分けて説明していきます。まずは乗車姿勢です。
乗車姿勢のポイント
サドルに座る位置
速く前へ進もう、力強く漕ごうとすると、前のめりになったり、サドルの先端に座る姿勢になっていしまったりしてしまいがちです。
しかし、サドルへ前乗りになりすぎては、使うべき筋群が使えなかったり、膝への負担が大きくなってしまったりします。自分に合うポジションのバイクであるなら、サドルの後方にきちんと座ることで、脚の後ろ側の筋肉(ハムストリングなど)を動員してスムーズなペダリングが可能になります。

良い例:サドルの後方にきちんと座れている

悪い例:前乗りになっている
ハンドルの持ち方
ハンドルのブラケットは手を外側から添えるようにして持ちます。ハンドルは身体を預ける場所ではなく、あくまでも進行方向を決定するための操作を行う場所です。そのため、ぎゅっと「握る」というよりは「持つ」というイメージになります。
また下の右側の写真のよう、肘の内側が真上を向いてしまうような手の向きでハンドルを握ってしまうと、肩甲骨がロックされて腕の動きが制御されてしまいます。左写真のように、前ならえの状態でハンドルを持つことが良いと言えます。このしせいであれば肩甲骨、上半身も動員させて乗ることが可能になります。

【左】良い持ち方【右】悪い持ち方
上体の姿勢
上体の基本はリラックスしつつも(無駄な力を入れずに)、動作の根幹となる体幹を安定させることです。フォームについては「腕を突っ張るのではなく、肘が少し曲 がるくらい」とよく言われますが、私はお腹にボールを抱えているイメージで腕を前に出し、ハンドルを持つように教わりました。

良い例:体幹で支えられている

悪い例:ハンドル荷重
ロードバイクの前傾姿勢でこのようなポジションを維持するには、より体幹の力が求められます。そのため、上手く体幹を使いこなせていない人や体幹筋が弱い人は、ハンドルに体重がかかり手や腕が疲れてしまったり、サドルに体重を預けてしまってお尻が痛くなったり、腹圧が保てないことで腰が痛くなってしまったりします。
このような余計なストレスをなくし、より長くより速くバイクで走れるようになるためには「体幹」をしっかりと強化する必要があります。
次に、基本となる体幹トレーニングの例を少し挙げていきたいと思います。
乗車姿勢の維持に必要な基本の体幹トレーニング
腹式呼吸
腹式呼吸は体幹トレーニングの基本の「基」です。これをしっかりとマスターしてからトレーニングメニューに移ることが何より大切です。
ポイントは、息を大きく吸って吐くという動作の中で、身体の中での息の流れや、筋肉の動きを感じることです。普段当たり前のように行っている呼吸ですが、意識を向けて筋肉を動かすことで、身体が温まる感覚が得られます。
プランク
腹横筋、腹直筋、脊柱起立筋に効く
サイドプランク
腹斜筋に効く
ヒップリフト
大殿筋、脊柱起立筋、腹横筋に効く
一言に体幹といっても胸、背中、腰、腹筋、お尻などの構成要素で成り立っています。そのため自分で体幹トレーニングのメニューを組み立てる時は、今回示したように様々な体幹部分にバランス良く刺激が入るようにする必要があります。
そして、このような基本のメニューができるようになれば、動きをつけたり重りを加えたりと、徐々に負荷や強度を上げていくことで、レベルアップしていくことができます。
また、バイクに乗る前のウォーミングアップの一つとしてこれらの体幹トレーニングを行うと、バイクに乗ったときの上半身の安定性が変わってきます。眠っていた体幹の筋肉を目覚めさせる一つの方法として、体幹トレーニングはおすすめです。
基本ペダリング技術を解説
走動作において、速く走るためのドリル(身体の使い方などの技術面のトレーニング)があるように、ロードバイクでは速く走るためのペダリング技術というものがあります。
ただ、筋肉がありパワーの出力が大きな人や、持久力に優れた人はペダリング技術が劣っていてもそれなりに走れてしまうという現象が起こることも事実です。しかし、体力的に自信が無い人やさらなるレベルアップを目指している人は、特にペダリング技術を習得し、自分のものにすることが重要となってきます。
ここではペダリング技術を習得するための方法として、1.使う筋肉を理解することと、2.ローラーによる回転練習の二つを挙げたいと思います。
使う筋肉を理解する
単に脚を動かしているといっても、どこを主体に動かしているかで動きの内容は異なってきます。トップアスリートに見られるキレイな動きや、無駄のない動き、素早い動作なのにダイナミックな大きな動きなどは、きちんと使うべき筋肉や部位が使えている証拠です。
日本人は欧米人との骨格の違いから、お尻や股関節を上手く使うことが苦手と言われていますが、意識すること、トレーニングすることによって、お尻周りや股関節を主体とした動作を手に入れることは可能です。
「股関節を意識してと言われても……」という人も多いかと思いますが、まずは脚を関節ごとに分解して、それぞれを動かすことができるようになることが基本であると思います。
足をパーツごとに意識して動かす
まず脚は、下から足指、足首、膝、股関節の4つに分解することができます。
最初は足指をグー、チョキ、パーなど動かせるようになること、
次にペダリング動作において足首を意識して脚を上に持ち上げる、引き上げることをやってみてください。
そして膝を意識して、膝を高く上げるように脚を持ち上げてみる。
最後に股関節、お尻の筋肉で脚を持ち上げる、引き上げる意識で動かしてみてください。
最初のうちは膝や股関節に意識を向けても膝下から足首にかけての力が抜けきらずに力んでしまってカクカクした動きになるかもしれません。しかし、練習していると膝なら膝、股関節なら股関節とピンポイントで意識することができるようになり、他の部分の力みはなくなってきます。
また、このように脚を部分的に意識することで、自分の脚がどのような仕組みになっているか、筋肉がどうなっているかを実感することもできるようになります。
こういった技術練習は一回やったからといってすぐにOKとはいかないものです。多くの人が「どうやったらすぐにできるようになるか」を求めてしまいがちですが、毎日コツコツして、無意識にでも行えるようになるまで積み重ねていくことが大切です。
ローラーによるペダリング練習
ローラーの種類には固定ローラーと3本ローラーがありますが、まずは固定ローラーで行うのがおすすめです。
ペダリングは踏むのではなく、回すものだと言いますが、この回す感覚もローラーを使い、軽い負荷で行うことで実感できると思います。
回転数(ケイデンス)については、ここでは90回転くらいにとらわれる必要はありません。自分が少し努力して回せる(普段よりも気持ち高めの)ケイデンスで行ってみてください。基本のフォームのところでもお話ししましたが、ケイデンスが上がってくると体幹の重要性も増してきます。
体幹がしっかりしていないとフォームが崩れて、ペダリング中にお尻がポンポン跳ねてしまうこともあります。そのため、ここでも基本のフォームを意識して、サドルの後ろにきちんと乗ることが大切です。ポイントとしては身体が前へ前へ行かないように、少し上体を後ろへ引いてあげる意識を持つことです。
重い負荷のペダリングでお尻周りの筋肉を意識
ここまでは軽い負荷での高回転のペダリングにより、ペダリングの「動作」の練習でしたが、もう一つ、重い負荷での低回転のペダリングの練習というのもあります。
これは重い負荷により、軽い負荷では意識しにくかったお尻周りの筋肉を意識してペダリングを行う練習です。また、これは、ハンドルの下部分を持ち、より前傾姿勢になることで意識しやすくなります(下ハンの姿勢)。
ポイントとしては、ゆっくりとお尻周りの筋肉を意識して、お尻周りが動いていること、温かくなってくることを感じながらペダリングを行うことです。

下ハンの姿勢
最初のうちは固定ローラーでも良いですが、バランス感覚を養う点でも、最終的には3本ローラーでこれらの練習が行えるようになれば、実走での走りにも直結してくると思います。
- 軽い負荷での高回転ペダリング→動作習得
- 重い負荷での低回転ペダリング→お尻周りの筋肉を動かす
最後に
多くの人にとって、ロードバイクで速く走れるようになることが大きな目標かと思いますが、まずは基本のフォーム、そして基本のペダリング技術をしっかりと自分のものにすることをマスターしてもらいたいと思います。
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